夢をひとつに

詩・曲  西野成治

青い空をこえてきた 愛しい君に会うために

花の色に身をつつみ 涙色に染めていた

君の大切な 人は今どこに

待ちわびた花が 枯れないように 私の歌をとどけよう

  青い海のその向こう 幼い夢は帰らない

  白い花はいつどこで 赤い花よ なぜどうして

  痛い心を聞いてください 人の心を見せてください

  冷たい冬が とけるように

長い時を 耐えてきた 哀しい君の年月と 打ち捨てられた 花びらを

ひとひら ふたひら ひろいあげよう

昔に戻って 手をとりあって 幼な子のように 踊れるように

君の心 抱きしめよう

  青い空の下 夢をひとつに 青い空の下 夢をあらたに

  青い空の下 夢をひとつに 青い空の下 夢をあらたに

 たった一人の父親が、日本に連れて行かれ、その生死もわからず遺骨も返らない。そして、その大切な人の無念さをいだいたまま、この世を去った、母親。墓前にたたずみ涙にくれる遺族の人の話を聞いて、どうしようもない憤りに心が固まってしまいそうになりました。  この日本という国の、この「人道的」という言葉を乱発するこの国の政治は、一体、数十年間、何をしてきたのでしょうか、それとも、戦争でけちらした朝鮮の花びらなど痛くもかゆくもないのでしょうか。  思えば、この遺族の人たちの人生を知るために、奪われた半生を取り返す方法はないのかを探すために、この地を訪れたのでした。うち捨てられた花は百や二百ではなく、幾千幾万とあるに違いありません。今、そのひとつひとつを拾い上げる作業を、韓日の心ある人達で取り組んでいます。それは少なくても、この数え切れない人々の無念を晴らし、もう一度、子どもの時に戻って、あの時に止まってしまった人生を取り返すための力となるのです。一人の人間としてあたり前の人生のあたり前の夢を見るように、そして、私たちがひとつにつながっていくようにこの歌を広げていきたいです。(西野)

 

ひとひらの花

@ さあさ野辺に ひとひらの花 春の恵みに 揺れていた  

  鳥の声に 川の音に 星の夜に

  微笑んだり はしゃいだり 涙したり 微笑んだり はしゃいだり 涙したり

A さあさ雨に ひとひらの花 踏まれ潰れて 濡れていた

  一人きりで 何も見えず 声も出せず

  悲しくて 寂しくて 悔しくて 悲しくて 寂しくて 悔しくて

B さあさ風に ひとひらの花 千切れ飛んで 消えていった

  夢も見ずに 闇の中へ 海の底へ

  探せど 届かぬ この祈り  探せど 届かぬ この祈り

  凍てつく 雪解かす 春を呼ぼう

  空の青と 海の青を 花びらに染めて

  しまの緑に 負けないように やま一面に咲かそう

  ひとひらの花 幾千の花 幾万の花 さあさ さあさ さあさ

月桃の花歌舞団の創作曲。「恨之碑」建立運動の中で作られた。舞鶴フィールドワークでは、浮島丸追悼碑の前で合唱した。