事実と向き合うことを拒否し、
司法の独立をも放棄した御用判決!

《 声 明 》

 5月25日、東京地裁は、在韓軍事軍属裁判(01年6月29日一次提訴、03年6月12日二次提訴、併合)の判決を下した。判決の内容は、「原告らの請求をいずれも棄却する」というものであり、事実認定を一切行わず、国の主張をなぞった前代未聞の不当判決である。我々は、司法の独立さえ放棄するようなこの前代未聞の不当判決に心底から抗議するとともに、原告団、弁護団と一体となって、法廷内外で勝利するまで闘うことを宣言する。

 判決は第一に、徴兵・徴用及び戦闘配置、戦闘行為、労働、死亡、傷害、未払金、軍事郵便貯金にかかわる損害賠償請求のみならず、BC級戦犯やシベリア抑留にかかわる損害賠償請求およびシベリア抑留期間中の未払賃金請求についても、日韓請求権協定および措置法で解決済みと強弁していることである。今や日韓請求権協定文書公開により、BC級戦犯問題やシベリア抑留問題が日韓協定議論の対象にも上らなかったことが明らかになってきている状況下にもかかわらず、日本政府の意図を代弁するかのように、「1965年6月22日に存在した韓国国民の『財産、権利及び利益』はについて・・・全て消滅させた」(判決文)と判決を下した。そして、原告がとくに主張していた、法律144号が憲法29条(財産権)に違反するとした点についても、何の根拠も示さず、「憲法の各条項の想定の範囲外」(判決文)として請求を棄却したのである。

 第二に、遺骨の返還については、遺骨の所有権は日韓請求権協定の対象外としながらも、遺骨の所有権が「権利に該当するとすれば」(判決文)日本国がその遺骨を保管していたとするならば死亡したものの家督相続人や又は祭祀承継者は「所有権を喪失したこととなる」としているのである。人道の根本である遺骨や祭祀さえも日韓請求権協定で「解決」させることができたかのように判決を下しているのである。こういう考え方からは、遺族の悲しみとそれを踏まえた方策など何も生まれてこない。

 最大の問題は、靖国合祀問題である。判決は「確かに、(昭和31年の『靖国神社合祀事務に対する協力方について』通知など)被告国が靖国神社に協力的であった事実が認められ、このような時期に旧厚生省の回答により靖国神社に合祀されたと認められるけれども、被告国が行った戦没者通知は一般的な行政の範囲内の行為というべきものであり」(判決文)と結論している。何の論証もせず、国が主張していることをそのまま採用しているのである。わざわざ、靖国神社を特定し、通知まで出し、旧憲法下のやり方を復活させた行為を「一般的な行政の範囲」としたのである。加えて、この通知があった時期、原告等はすでに韓国人であり、恩給等の対象からも排除されていたのである。

 我々はこのような御用判決に屈しない。「命尽きるまで日本政府を追及したい」(李炳柱氏)「失ったことより得たもののほうが多い。多くの日本人の心を得た。」(李熙子氏)との決意 、そして、「戦後補償問題は100年戦争」とし、最後まで闘う意志を貫きながらも無念のまま他界された金景錫さんの遺志に応え、最後まで闘う。

2006年5月26日  
在韓軍人軍属裁判を支援する会