在韓軍人軍属裁判  最高裁の上告棄却の決定を糾弾する!


 11月30日、最高裁判所第二小法廷は、在韓軍人軍属(グングン)裁判の上告を棄却した。憲法20条(政教分離)違反、日韓請求権協定、いわゆる措置法(1965年法律第144号)の憲法違反、その解釈の誤り等を提起しているのにもかかわらず、上告については「単なる法令違反を主張するもの」として、また、上告受理申立てについても「受理すべきものとは認められない」と何のコメントも付けず、上告を棄却した。最高裁は「憲法の番人」としての責務に背き、憲法判断を回避したのである。しかし、これにより、控訴審判決が確定した。韓国人原告の請求に正面から向き合おうとせず、請求を棄却し、非人道的事態を放置したことに、満腔の怒りをもって抗議する。

 グングン裁判控訴審は、靖国合祀問題では「国の側に一般の国民に対する協力よりも手厚く靖国神社の合祀を支援する意図が全くなかったとは言い切れず、その行為の規模の大きさや期間の長さにも照らし、一般人がこれを靖国神社を特別に優遇するものではないかと感ずる可能性も否定できない」とした。このような事態は憲法20条違反であることは明らかである。大阪高裁の靖国合祀イヤです訴訟判決では、「(国の行為を)靖国神社が行う合祀という宗教行為そのものを援助、助長し、これに影響を与える行為」と、国・靖国神社の合祀行為の違憲性を明確に認定した。国の行為は明らかに違憲にもかかわらず、最高裁は上告を棄却した。逃げたのである。

 グングン裁判の原告は、韓国人である。日本の司法はこのことを徹頭徹尾無視してきた。植民地支配を反省すべき日本が、その日本の司法が、植民地支配の結果引き起こされた軍事動員、戦死、靖国神社への合祀を全く裁こうとしないのだ。侵略した加害国の「英霊」として祀られることがどれほど屈辱的なことか、どれほど心身を苛なむことなのか、韓国社会では到底受け容れられないことなのかは、あますことなく立証されてきた。この事実からも最高裁まで逃げたのである。

 われわれは、これからも、この不当極まる判決をはね返し、原告と固く連帯し、原告らの要求が実現するまで闘うことを誓う。靖国合祀取消しをもとめ、ノー!ハプサや他の訴訟、「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動」等と一緒にあらゆる手段を尽くして、原告の要求・合祀取消しを求めていく。

 グングン裁判は、靖国合祀取消しのみを要求しているのではない。シベリア抑留、BC級戦犯問題、生死確認・通知、遺骨問題等々、韓国人軍人軍属の多くの要求の解決を求めてきた。日本政府は日韓請求権協定の解釈を変更・拡大し、実態的な財産のみならず、あらゆる請求権を「解決済み」とし、司法はそれを追認してきた。しかし、韓国で沸き興る戦後補償要求の高まりが、問題が何も解決していないことを如実に示している。「慰安婦」問題での韓国政府の「不作為」についての違憲判決(韓国憲法裁判所)、日本の戦犯企業の韓国政府機関へ入札制限、日本企業の参加も呼びかけられている強制動員被害者のための財団の来春設立等々はその証左である。韓国強制併合100年の年であった昨2010年、韓国(朝鮮)植民地支配が全く清算されていないことが明らかにされた。何にも解決されていないのである。

 われわれは韓国の原告、支援運動とともに、シベリア抑留、BC級戦犯問題、軍人軍属強制動員問題の解決のため立法化を含めこれらの解決へ向けて全力を挙げることを宣言する。

2011年12月8日

             在韓軍人軍属裁判弁護団
             在韓軍人軍属(グングン)裁判を支援する会


 

                 主    文
 本件上告を棄却する。
 本件を上告審として受理しない。
 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

                 理   由
1  上告について
 民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。

2  上告受理申立てについて
 本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

  平成23年11月30日

       裁判長裁判官    千葉勝美
          裁判官    古田佑紀
          裁判官    竹内行夫
          裁判官    須藤正彦